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契約書翻訳第七回 かりゆし翻訳講座 「契約書」 受講者訳と評価

■概要

4つのグループがそれぞれ担当した部分の和訳を、一つの訳として以下にまとめました。ただし各グループは別々に作業を進め、用語や文体を統一する時間は無かったことに留意してください。スペルミスや表現の誤りなどには修正を加えず、そのまま反映されています。講師のコメントは赤でハイライトされています。

受講者訳のダウンロードはこちらから(PDF)

■契約書の一般条項 和訳 (4グループのまとめ)

1. 定義

本契約で使用されている用語は、それぞれ以下のような意味を持つ。

原文のヒントにもあるように、ここでは「語句」とするのが良いでしょう。

2. 通知

1 本契約に基づく全ての通知は、書面化され、上記の住所または両当事者に書面で通知された住所に、書留航空郵便で送付される。

「書面化」のように「…化」という書き方は契約書ではあまり見られません。住所変更の部分が訳抜け。

2 全ての通知は、投函された時点をもって、到達したものとみなされる。

3. 権利放棄

いずれかの当事者が、なんらかの場合において本契約の条項を適切に履行せず、または本契約に定められている権利を行使しない時、本契約と本契約の条項の権利が放棄されたとはみなされない。

"at any time" を「なんらかの場合」としましたが、これは誤解でしょう。これは「いつでも、 随時、 いかなる時点においても」などという意味です。

「権利を行使しない時」と区切るよりは、「しなくても〜」または「しないとしても〜」した方が日本語として自然でしょう。

"...rights herein granted shall not be considered a waiver of thereof..."とここで権利の放棄とはみなされないとしています。平たい英語に直すと、"...rights granted in the Agreement shall not be considered a waver of those rights..."のようになるでしょう。その後の"...provisions thereof..."というのはまた別で、これは契約の条項の一部の権利放棄ではないとしています。

4. 契約譲渡

一方当事者の書面による事前に合意がなければ、いずれか一方当事者による本契約もしくは本契約におけるいかなる権利の譲渡は認められない。

「一方の当事者」とした方がよいでしょう。

「書面による合意が事前になければ…」の方が良い流れ。

ここでは「一方」と「他方」を使いわけて分かりやすくした方が良い。Bの了解なしではAは勝手に譲渡できないとしているのだから。

5. 準拠法条項

本契約は、日本法に準拠し、同法に従って解釈されるものとする。

6. 完全合意条項

本契約は、本件主題についての口頭、書面による本契約締結以前の両者間の合意、了解、交渉のすべてにとって代わり、これを解除するものとする。また本契約は、合意書によってのみ施行される。

「主題」は契約書ではあまり見ない用語です。

ちなみに訳例には「〜口頭・文書〜」と中黒がありますが、これは契約書のスタイルとしてはあまりお勧めできません。普通に点をうつか「または」とかでまとめるのが良いでしょう。

「すべてにとって代わり」は言いたいことは分かりますが、原文の意味を取り違えているかもしれません。この訳だと"replace"を連想しますが、原文では"supercede"とあります。契約の効果上、規定事項の解釈が複数発生した場合は、本契約の条項を「優先」するという意味であり、契約締結以前の合意などがすべて消滅するわけではないのです。規定事項以外の合意でしたら、本契約が締結された後でも効果を持ち続けることでしょう。

"amended"が訳抜け。その結果誤訳。

7. 可分条項

本契約のいずれかの部分が、管轄裁判所または権限を有する行政機関に違法、もしくは無効を来たす場合には、同決定は、当契約の他の条項に影響を及ぼすものではなく、本契約の一部を構成していなかったものとして、依然有効であるものとする。

"shall be held illegal...by..." とありますから、「違法もしくは無効と判決された場合」が正しいでしょう。"hold"を辞書で調べてみてください。「〈裁判官が〉(…であると)判決を出す」とあるはずです。でも考えてみれば、「無効を来たす」という表現はそもそも一般的な日本語ではないと思います。

8. 言語条項  

本契約は、英語と日本語で作成されるが、同契約書の言語間の矛盾または相違がある場合には、すべての点において日本語を優先するものとする。

9. 見出し条項

本契約に用いられている見出し条項は、参考の便宜のみにつけられるものであり、同契約書の解釈には、影響を与えないものとする。

「見出し条項」だと第9条だけ。「条項の見出し」です。

10.不可抗力

いずれの当事者も、以下の事由により、本契約に定めた債務の不履行もしくは遅滞が生じた場合は、その程度に関わらず、他方の当事者に対して何ら責任を負うものではない。 かかる事由には、暴動、騒乱、戦争、国家間の敵対行為、政府による法律制定、命令あるいは規制、通商禁止、政府あるいは他機関による行為、天変地異、嵐、火災、事故、ストライキ、サボタージュ、爆発、その他同様の事由あるいは当事者の合理的な支配が及ばない事由などを含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。 但し、法律の制定や政府の行為の結果として、当事者の双方または一方が、本契約に定める利益を享受できない場合には、当事者は本契約の条項を再検討し、当時者の双方が当初の契約の通り対等の地位を回復するよう最善を尽くさねばならない。

「当事者の合理的な〜」はすべてにかかるものですから、上部にもってきたほうが良いです。

Controlは訳例で「制御」とありますが、「支配」でもOKです。

「本契約に定める利益」についてですが、契約書は権利や義務を定義するものであり、「利益」を定めることはありません(利益の解釈は主観的であるゆえ、客観性を重要視する契約書にはなじみません)。「権利による便益を〜」とした方が良いでしょう。

11.仲裁

本契約または本契約の解釈あるいは履行に関して、当事者間に生じた全ての紛争は、英語により、スイスのジュネーブもしくは当事者間で合意された場所において、3人の調停人を立て、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の調停規則に則った調停に付すものとする。 調停人により仲裁によって下された裁定は、最終的なものであり、本契約の管轄裁判所で記録されるものとする。

見出しが「仲裁」とあるのですから、当然「仲裁人」と「仲裁規則」になります。

12.契約解除条項

1 本契約の他条項で定める契約解除とは別に販売店が会社から購入した商品に対し適切な支払いを行わない場合、会社は60日前までに文書により通知することにより本契約を解除することができる。   

2 以下の場合、いずれの契約当事者も本契約を解除できる。

a) 契約第一期の5年間満3時において、当該5年間終了時の6か月前までに他方当事者に対して契約解除に関する書面通知を提出する場合

「第一期」とすると、第二期や第三期があるものとしているニュアンスになってしまう。「満3時」?

前項は "60 days prior..." とありましたからシンプルに60日前でOKでしたが、ここではもっと具体的に "...no less than 6 months prior..." とあります。つまり「6ヶ月以上前」としなければなりません。これは非常に重要です。

b) 一方の当事者が支払い不能もしくは破産した場合、他方の当事者または資産の保有者あるいは受託者に対して契約解除に関する書面通知を提出した場合

a) では「提出する場合」なのに、ここでは「提出した場合」で一貫性がない。

ここは支払い不能もしくは破産した当事者に通知をして契約解除できるという意味になるはずなのですが、訳文ではどうなっているのかよく分からない。

ちなみに訳例では括弧()を使っていますが、これは契約書のスタイルとしてはあまりお勧めできません。

c) 本契約のいかなる条項についても契約違反がある場合、60日前までに書面通知を提出したにもかかわらず、通知期間終了までに他方当事者が当該不履行が治癒されなかった場合

ここは訳例のように二つに分けた方が読みやすくなったかもしれません。原文がワンセンテンスなら訳文もワンセンテンスであるべきだという意見を持つ翻訳者もいますが、私は読みやすさが犠牲になるくらいだったら切断した方が良いと考えています。好みの問題ですね。

13.契約期間条項

本契約は、契約者の代表者が署名、捺印する日付に効力を発し、締結日から2年間有効とする。以後いずれかの当事者が失効日の少なくとも30日前までに他方当事者に契約を延長しない旨通知しない限り、一年毎に自動更新される。

「一年毎」=「毎年」の方が普通です。

14.本契約の証として、本契約当事者は、冒頭記載の日に、それぞれ正当な権限を有する役員または代表者によって署名、捺印し本契約を締結せしめる。

これはどの契約書についても言えることなのですが、原文ではhave causedとあるので、契約書は締結されることを前提として書かれています。ですから訳文も「せしめた」とするのが良いでしょう。